アルフレッド殿の放った《香車弓術》は、軌道が僅かにズレた貫通矢に当たることはなく。彼はその左肩に《角行弓術》を喰らい、俄かにバランスを崩す。「く……ま、まだだっ!」 が、倒れ伏すことはなかった。恐るべき気力で体勢を立て直し、こちらへ向かって《歩兵弓術》を撃とうとする。「…………」 私は、無言で、《金将弓術》を放った。半径3メートル以内への範囲攻撃+ノックバック。 ……もう、それほどに接近していたのだ。アルフレッド殿は、私の位置を捉えられなくなるほど、ギリギリまで追い詰められていた。それでも、決して膝をつくことなく、最後の最後まで、攻撃しようとしていたのだ。「――っ!!」 ノックバック効果で後方へと吹き飛ばされるアルフレッド殿。 ああ。その、先は……。「場外! そこまで! 勝者、シルビア・ヴァージニア!」常に複数の狙いを持つ。セカンド殿に教わったことだ。 新鬼殺しは、天空からの《角行弓術》へ対応させ、直前で《桂馬弓術》による狙撃で軌道をずらし、それを本命と見せておいて、同時に急接近からの近距離攻撃を狙う奇襲戦法。 目の見えないアルフレッド殿にとっては、実に厄介な戦法だったことだろう。 ゆえに……こうも、呆気なく、決着がついてしまった。「……エルンテ鬼穿将は、私に任せておいてくれ」「頼む」 短く、一言。そうとだけ口にして、アルフレッド殿は気を失った。 ……負けられなくなったな。 奇襲戦法のストックは、これでゼロ。さて、どうしたものか。 ただ、賭けるものは見つかった。 私は騎士。セカンド殿の騎士。 彼の愛するタイトル戦のため、その秩序を守るため、私は、正義のために戦う……!