8月31日、その日だけ部活動のない息子と、夫は二人でドブ掃除をした。昨今は我が息子とて、家の仕事をさせるのに早くから予約をしなければならない。息子にOKをもらってから、夫は休暇をとった。
(A) コンクリートの側溝のふたをバールであけ、水を流して洗う。数年間の汚泥は大量にたまり、大変な作業だったが、20メートルほどを夕方までかかって終えた。
(B) 翌朝夫は、筋肉通のまま出勤した。見送って家に入ると、息子から、『母上』と敬称で呼ばれた。そらっ、来た。お金を要求するときだけ敬称がつく。「大を一枚、出世払いで」。いつもなら一言のたまうところだが、まあ今回はいいか……。
(C) 先に音をあげたのは夫。初めの勢いはどこへやらで「疲れた、疲れた」を連発。風呂上りに湿布薬を背中や足にたっぷりとすり込み早々と寝てしまった。高校生の息子は、さすがに若いだけのことはある。自転車で往復36キロの登下校をこなし、そのうえ上野球部員だ。余裕を残して夕飯を食べると、たまりに溜まった夏休みの宿題を始めた。体力に物を言わせた一夜づけである。
(D) 朝食を済ませて、早速仕事に取りかかった。ゴム長グツに履き替えた夫は、サンダル履きのままの息子が気にいらぬ。「仕事をする格好じゃない」と小言をいう。それでもとにかく、仕事を始めた。
とたんに娘に声が飛んできた。「出世しなかったらどうするの?」噴き出した。息子は涼しい顔のままである。全員を見送った目に青空がまぶしかった。