クラウスの解説に、マインは思わず閉口した。 雲の上の人だと思っていたのだ。海抜0メートルの麓から、雲に隠れて見えない頂をずっと見上げていた。そして、ようやく、雲の上まで辿り着いてみたら……その先は、麓から雲までの距離よりも、何倍も、何十倍も高かった。頂上が霞んで見えないほどに。 この世界に暮らす彼らに宇宙という概念が存在するのかは定かでない。だが知っていたとすれば、きっとこう思うに違いない。宇宙の人だと。彼は宇宙人だと。その山の頂は、宇宙空間まで到達しているのではないかと。「改めて恐ろしいと感じました。クラウスもそうですか?」「私は……畏敬の念を。もしできることならば、彼に剣を学びたい」 意外な言葉。マインは目を丸くして……それから、にこっと笑った。「丸くなりましたね、兄上」 彼の母フロンによく似た笑顔。 クラウスは少し頬が熱くなるのを感じながら、微笑んで返した。「第一王子という立場。その矜持も、権力も、次期国王への固執も。今思えば、私には不要のものだったようだ」 そして、マイン。愚かではない弟。お前は、聡明に、純真に、成長したようだ