ウイスキーの瓶を見たとたんに、ブルーノさんの目の色が変わった。「お、オメー、これはっ、“幻の酒店”のっ」 おろ、ブルーノさん知ってるの?「まぁまぁ、ブルーノさん。その話はしてはいけないって聞いていませんか?」 俺がそう言うと、ブルーノさんがハッとした顔で口をつぐんだ。 そして、お供の2人に「お前ら、すぐ行くから外で待ってろ」と言って、2人を先に行かせたあと……。「ちょっ、こっち来い」「何なんですかブルーノさん」 ブルーノさんは周りに人がいないことを確認すると、小声で……。「店主はSランクの冒険者だろうっていうのはチラッと聞いていたが、あの店の店主はあんただったんだな」「まぁ。というか、ブルーノさんはその話はどちらで?」「ん? 俺の弟からだ。これ以上ないくらい美味い酒が手に入ったから恵んでやらぁって、手紙と一緒に送ってきやがった」 旅先の街で時間があるときに、俺が道楽でやっている酒店。 いろいろと規約を設けているし、場所も時間も決まっていない神出鬼没の店だから、ドワーフたちの間では“幻の酒店”と噂されている。 何でドワーフたちの間で噂されているかと言うと、客がドワーフしか来ないからだよ。 別に俺としては、人種をドワーフに限定しているわけじゃないんだけどね。 美味い酒への執念はドワーフに敵う者はいないってことなんだろう。 ま、そんな知る人ぞ知るという俺の店をブルーノさんは知っていたわけだ。「それで、この街では“幻の酒店”やらんのか?」 そういって期待の込めた目で俺を見つめるブルーノさん。 髭面のおっさんに見つめられてもねぇ。 それに何と言っても……。「今のところは忙しくて」 俺がそう言うと、この世の終わりみたいに絶望した目をしてガックリと項垂れるブルーノさん。 え、そんなに落ち込むこと? なんかこっちが悪い事したみたいなんだけど。「えーと、先ほどの酒と同じのならば何本か都合つけますけど」 そう言うと、ブルーノさんがガバッと顔を上げた。「本当か?!」