高橋さんもそうだ。オカンさんもそうだ。そして、ミロクこそそうだ。 ミロクは、好きなことを好きなようにやりたかったやつらの結晶体。 千年間の無念がその魂に凝縮されている。 好きなことを好きなようにやれず、何が抜刀術だ。 そんなもの、壊せるなら壊したい。 よし、壊そう。「独占は許さない。抜刀術の面白さを独り占めしようったってそうはいかないぞ。これからは世界中の誰しもが抜刀術を楽しむ時代だ。威張るんなら、その上で頂点を獲ってから威張れ。わかったか?」 懇切丁寧に説明してやる。 すると、何処の流派ともわからない侍どもがぎゃーぎゃーと騒ぎ出した。「何を勝手なことをべらべらと!」「我らの歴史を愚弄するか!」「それこそ到底許されるべきことではない!」 彼らからしてみれば、俺の言っている話は“許されないこと”らしい。 まあ、彼らの利権が危ういものになるわけだから、気持ちはわからんでもないが。 重要なのは、何をもって許さないかだ。こいつは、意味をわかって言っているんだろうか?「許されないのか?」「左様! 皆、許すはずもない!」「皆? お前じゃなくて、皆が許さないのか?」「拙者とて許せぬ!」「そうか。じゃあ俺もお前を許さない」「……はっ!?」 戦争だ。 古来より、意見の違う相手は物理的に説得するよりないと相場が決まっている。「かかってこい、先手は譲ってやる。なんならその皆とやら全員で同時にかかってきても構わない」「……っ……」 俺が挑発するように言うと、侍くんは左右を見渡して、皆を確認する。彼の仲間たちは全員、及び腰のようだ。 ちらりとトウキチロウの様子を見ると、真っ青な顔をしていた。あいつは知っているのだろう。俺が【抜刀術】だけではないことを。「来ないのか?」 最終確認。