そっと、プリムラの柔らかい金髪を撫なでる。見れば涙目じゃないか。 まぁ確かに、あのメス蜘蛛はヤバかったけどな。その苦戦の様子を、獣人達から聞いたのかもしれない。「にゃー」 ベルが俺の下にやって来た。「よしよし、ありがとうな」 彼女の毛並みの良い毛皮を撫なでてやる。「そうだ、プリムラにも大蜘蛛を見せてやるよ」「え?」 俺は、アイテムBOXからメスの大蜘蛛を取り出しプリムラの前へ出現させた。 洞窟内では暗くてよく解らなかったが、白い甲殻はキラキラとした結晶のような物で覆われているようだ。 それが陽の光に反射して、この全体の見た目にそぐわぬ程に美しい。「……ひぃ……」 目の前に現れた大蜘蛛を見て、プリムラの顔がみるみる血の気を失い――その場で昏倒した。 俺は慌てて、崩れ落ちる彼女を支えたのだが――。「おい、プリムラ! 大丈夫か?」 慌てて、大蜘蛛をアイテムBOXへ入れ直すと、彼女をお姫様抱っこして家に戻る。 部屋にベッドを出すと、そこにプリムラを寝かせた。「ふう……焦ったぜ。こんなに驚くとは」「旦那、そりゃ普通の人間が森に入って、こんな大物に出会う事は滅多にないからねぇ」「ああ、もしかして、この一帯にデカい魔物が少ないのは、この蜘蛛に食われてたせいかな?」「あり得るね」 部屋に椅子を出して、ニャメナと話をしていると、ベッドで横になっていたプリムラが目を覚ました。「うん……」「プリムラ、大丈夫か? 悪かったな驚かせて」「あ、あんな巨大な魔物を仕留めたのですか……?」「ははは、まぁな」「全く――旦那が、あんな鉄の化け物を操れるなんて思ってもみなかったぜ」「ケンイチは調教師テイマーですのよ」 それを聞いたニャメナが膝を叩いた。「ああそれで、森猫も懐いているんだな」「懐かない魔物もいるけどな」「あの蜘蛛でも、操れるのかよ?」「さてな、時間を掛ければ或いは……意思の疎通が出来ないから無理かな?」「全く、信じられないよ」 だが、ミャレーとニャメナに聞いても、あの蜘蛛が金になるかどうかは不明だと言う。「魔物の甲殻は貴重なんだろ? 魔法を弾く鎧だと……」「あんなデカブツを処理出来りゃいいけど……ギルド次第だな」 倒れたプリムラは大丈夫そうなので、外に出て検証をしてみることにした。 検証――何をするのかというと、蜘蛛の卵だ。 アイテムBOXから大きめのステンレス製のボウルを出し、その中へ毛玉のような蜘蛛の卵をいれる。 サッカーボールぐらいの大きさがあるから結構デカい。