身代わり伯爵ともう一人の王子様「――ああ、やっぱりそうだ。この本、どうしたんですか?」积み上げられた本の山から、リヒャルトが绿の装丁の本を手に取る。懐かしげにそれを见ているので、ミレーユは不思议に思いながらその本をのぞきこんだ。「あ、それね。エルミアーナさまにお借りしたの。すっごく面白いからって。でもまだ読んでないんだけど」数年前に流行した恋爱小说で、“王子様”なる英雄が活跃する物语だという。胸のときめき具合が半端ではないと推荐され思わず借りてしまったのだ。「面白いかどうかはよくわかりませんが、确かに、女性が好きそうなお话でしたね」「えっ。ま、まさか、リヒャルトも王子様本の爱読者なの……!?」だからこんなにいつも王子様然としているのかと目を丸くするミレーユに、リヒャルトが苦笑して首を振る。「妹が昔読んでいたので、なんとなく覚えていたんですよ」「セシリアさまが?そうなの……」偶然とはいえセシリアの异母姉にあたるエルミアーナからの推荐本だ。やはりかの姉妹の趣味は似ているらしい。「……やっぱりあなたも、こういうキラキラした男が好きなのかな」ぱらぱらと页をめくりながらリヒャルトがぼやく。ミレーユは瞬いて彼を见た。「その王子様、キラキラしてるの?あたしは别に、そういう意味の辉きは求めてないわ。キラキラはフレッドだけで充分だし」「じゃあ、どんなのを求めてるんですか?」「うーん。もっと落ち着いた感じの、大人っぽい人がいいわ。木阴で読书とかしてそうな」华丽な“王子様”に憧れていた顷もあったが、今は、それよりもっと素敌な“王子様”がいるような気がする。こう思うようになったのは大人になったからだろうかと、ミレーユはしみじみしながら続けた。「头がいいだけじゃなくて、剣の扱いがうまくて喧哗も强かったら、もっとかっこいいわよね。でも怖い感じじゃなくて、优しい人がいいわ。常にお菓子をくれたり、暗いところでは手をつないでくれたりして」ふうん、と楽しげにリヒャルトが相槌を打つ。正面に座って軽く頬杖をついている彼を、ミレーユは无意识にのぞきこんだ。「髪も金色とか银色よりかは、茶色みたいな渋いほうがかっこいいと思うし。目の色も同じね。苍や翠もきれいだけど……、あたしはやっぱり、こういう色が好き」そう――彼の瞳のような、优しい色が。その优しい瞳が、ふと微笑んだ。「つまり、俺のことが好きなんですね」「……へ?」「今の话、俺のことじゃないんですか?」きょとんとしたミレーユは、すぐに気づいて颜を赤くした。つい力说してしまったが、确かに、ぜんぶ彼に当てはまる――。「ち、违うのよ!今のは别に、爱の告白とかじゃなくて、たまたま好きな人の条件があなたと同じだっただけで……ほ、ほんとよ!」「たまたまですか。それはそれは」「ちょっと、本気で闻いてないでしょー!」にこにこしながら见ているリヒャルトに、ミレーユはさらに赤くなって叫んだ。ミレーユの王子様は、优しいけれど、时々ちょっと意地悪だ。 了