確かにゲスリーの顔の造形は整っているとは思う。 それに金も名誉も地位もなんでも持っている。 でも、ただ一つ、人として大切なものが足りないっていうかね……。 私は、諦めるように息を吐いた。「私の婚約や結婚は期限付きです。あまり本気になっても大変でしょう」「期限付きだなんて、そんな悲しい事言わないで。先のことはどうなるかわからないわよ」「でも、実際期限付きです。ヴィクトリアさんも。よーくご存知のラジャラス様がそう言ってましたけど」「あら? ラジャラスがそんなことを? 聞き間違いじゃないかしら」 とか言って、にっこり笑うけれども、こっちはこの耳でしかと聞いてるからね! ていうか、ラジャラスさんにああ言わせたのは絶対ヴィクトリアさんの策略だって私思ってるからね?「ふふ、でも先のことはどうなるかわからないわ。今度、ヘンリー殿下とお出かけなさるんでしょう? せっかくのデート楽しんでらしてね。でも、一つ気になることがあるのだけど……デートの行き先ってどうしてここなの?」 そう怪訝そうにヴィクトリアさんが言って、私の今後のスケジュールに関することが書かれた書類を指差した。『王都の牧場』 私とゲスリーのデートコースの中に、突然出てくる王都の牧場。 そう、公務として福祉施設を回った後、何故か牧場に行く予定になっているのだ。「……ヘンリー殿下の趣味でございます」 そう私は神妙な顔で答えた。 何せ彼は家畜大好き人間ですからね……。