「……ああ、ノースポール騎士爵様ですね。あの方は良い方ですが……」「こんな事になって、マロウさんがなんと仰るか」「父は反対していませんけど」 お父さん、そこは反対してよ! でも賛成もしていないんだろう。父親から見たら自分ぐらいの歳の男に娘を取られるなんて、かなり複雑な思いのはずだ。「申し訳ありませんが、それについては保留にしておいて下さい。あまりに責任が大きすぎて即断できかねます」「そ、それでは、一緒に寝るだけでも……」 プリムラさんの顔は真っ赤だが食い下がるなぁ。「う~ん、寝るだけ。寝るだけですからね」 一応、念を押す。「はい!」 プリムラさんにピンクの寝間着を出してあげて、一緒に寝ることになってしまった。 何が悲しゅうて、こんなオッサンをご指名なのか。まったくもって意味不明。 しかし相手は取引先のお嬢さんだ。小遣い稼ぎの宿屋のアザレアと寝るのとは、わけが違う。 暗い中、一つのベッドで彼女と2人。 プリムラさんが抱きついてくると、温かい体温が伝わり、漂ってくる何かの香り。 石鹸だろうか? それとも香水のようなものか? しかし本当に良いのだろうか?