モーリス商会! 私とご主人様の平穏を崩しかねないその存在を片時も忘れたことはなかった。しかし私が一人の時を狙って来ようとは! 恐らくは業者のうちの誰かが余計な気を利かせたか、口を滑らせたか。いずれは直面する問題だと思ってはいたが、まさかよりによって今日とは思っていなかった。 私は既に奴隷ではなくなっている。ご主人様によって“脱獄”させていただいた。ゆえにモーリス商会に存在する私の契約書は失効しているはず。言い逃れはできない。 どうするべきか。会わないという選択もある。だがその場合、関係の悪化は否めない。