……うん、やっぱり分が悪いわよね。クェンティン団長もザカリー団長も強いけど、青竜2頭を相手にするには明らかに人員が不足している。一体どうするつもりなのかしら、と首をかしげたところで、ザビリアから声を掛けられた。「……フィーア。言ってなかったけど、僕は昔、青竜だったんだ」「はい?!」突然思いがけない話が飛び出し、思わずザビリアを凝視する。「せ、青竜?! え? む、昔って、ザビリアにも前世があるのかしら?! あ、いや、待って。聞いたことがあるわ。竜は千年生きると……」「そう、千年生きた竜は黒竜として生まれ変わる。それが僕だよ」「へ……」「だから、甘えたことを言っているのは分かるけど、できれば青竜とは戦いたくはないな」ザビリアは言いにくそうな表情で、ぼそりと呟いた。私はザビリアが何かをやりたくないと言うのを、初めて聞いた。これを否定するようじゃ、お友達として失格よね!「も、もちろんよ、ザビリア! 私に任せてちょうだい!!」元が青竜ならば、ザビリアにとってあの2頭は、同種の仲間ってことだよね。確かに、戦いたくはないはずだわ。私は大丈夫という気持ちを込めてにこりと微笑んだけど、ザビリアはしょんぼりしてうつむいた。「ごめんね、フィーア」ダ、ダメダメ、ザビリアを意気消沈させるなんて。ここは私が何とかして、「ザビリアが不参加だったから悪い結果につながった」なんて状況にならないようにしないと!頑張ろう!……と考えている視界の先で、クェンティン団長が動いたのが分かった。「え?!」と思わず凝視すると、クェンティン団長は助走をつけて跳躍すると同時に抜刀し、グリフォンを捕らえている方の青竜に切りつけた。同時にザカリー団長も動き、クェンティン団長の反対側から青竜に切りかかる。早い!そして、剣戟が鋭い!!想像以上の攻撃の鋭さに、私は思わず目を見張った。特にザカリー団長は、大剣使いだ。一刀目はどうしても剣速が上がらない。剣の勢いを保持するためには、剣を止めないことが大事だけれど、上手に斬撃の向きを変えて、剣を振り続けている。あ、達人だわ。そして、あの重い剣を振り続けるなんて、すごい筋力だわ。感心してみていると、数回に一度、とても良い一撃が入っている。「すげぇ、ザカリー団長! クリティカルヒットの連発だ!!」騎士たちが叫んでいるけど、いや、これは身体強化ですね。完全な形にはなっていないけれど、ザカリー団長は多くの戦闘を経験した中で、感覚として身体強化を身につけつつあるようだ。私は本気で感心した。ザ、ザカリー団長って、すごい……完成していないとはいえ、身体強化を独学で身につける人なんて初めて見た。圧倒的にセンスがいいのね。こういう人を天才って呼ぶんじゃないかしら?