だが、50人以上の獣人達が並んでマラソンをしている姿は、まるで走る民族大移動だな。 毛並みも色々な種類がいて、見ていて楽しいし、なんだか微笑ましい。柄の種類は元世界の猫と全く同じに見える。 車を運転しながら、並行して走る獣人達を眺めていると――彼等も、こちらに気づき手を振ってくれる。 それどころか、車の窓からベルが首を出すと、両手を合わせて拝む奴まで出る始末。「男の三毛柄っていないんだろ?」「旦那、よく知ってるな」「そうにゃ!」「でも、ごく稀~に、男の三毛もいるんだろ?」「その通りにゃ!」「でも、本当に珍しいから、貴族に飼われて見世物になったりするんだぜ」「そりゃ、可哀想だな」 ここら辺も猫の柄と一緒だな。 それよりもだ……。「おい、カナン様~、なんで俺の名前を出したんだよ」「そ、それは……素晴らしい友人がいたら、自慢したくなるのは道理ではないか」「本当に、友達いないんだなぁ」「ふん、貴族の友人などありえん。全てが脚を引っ張り合う敵同士だ」「殺伐としてるねぇ。そうなのか? プリムラ」「私が知る限りでは、仲のよろしい方々もいらっしゃいますけど……」「全てが上っ面だけであろ!」 どうも、夫人は貴族社会に幻滅をしているようだ。「それじゃ、机の上でニコニコと握手としていても、机の下では脚を蹴り合っていると?」「全く、その通りだ!」 今回の出来事で、隣の領に俺の名前が知られてしまった。これで加速度的に噂が広まってしまうだろうか? そうこうしている内に、アストランティアへ到着した。「もう到着したのか。全く、この召喚獣は、すばらしいのう!」「私の友人が、凄い魔法と召喚獣を操って! ――とかいう自慢を他の人には、しないでくれよ、カナン様」