ミーナの考えていることはなんとなくわかる。 ミーナは人間社会と人間文化を愛しているが故に、人間社会を滅ぼす他の魔族を排除したいと言っている。 その言葉に嘘はない。 だが、同時に魔王の力を手に入れたいとも思っているふしがある。その条件は人間千人以上の魂から作られる【生命の実】が三つ以上必要。 ミーナはもし自分でそれを作ろうとすれば、俺の標的になることを知っている。 だから、他の魔族に【生命の実】を作らせてそれをかすめ取ることを選んだ。 しかし、八体の魔族のうち、ミーナを入れて生き残りはたった四体。 ミーナにとって、ここまでに【生命の実】が一つしか作られていないことは想定外。現段階では、これ以上魔族が減ることを歓迎はしないだろう。「そういうことなんだね。でも、アラム・カルラに会ってどうするの?」「アラム・カルラがまだ堕ちていないかを確認する。すでにアラム・カルラが堕ちていれば、罠とわかっていて聖域に行くことはない。名前を捨てて逃げることを選択する」 それだけ、アラム教の影響力がでかい。 想像してみてほしい、貴族や教会関係者どころか、すべての国民が敵に回る。街で歩く人々が、悪魔だと罵り石を投げてくる。 ルーグ・トウアハーデとして生きるのは不可能だ。 アラム教の力が及ばない遠くの地へ行くか、顔と名前を変えて生きながら、汚名を晴らすチャンスを伺うしかないだろう。「そのときは私も一緒だよ」「私もです!」「犯罪者よりもよほどひどい境遇になるのがわかっているのか?」「わかってるよ。でも、ルーグが一緒じゃないほうがもっと嫌」「私はルーグ様の専属使用人ですから!」 まっすぐな好意がとてもまぶしくて、同時に胸を暖かくしてくれる。「ありがとう。うれしいよ。そのときは一緒に居てくれ。一人は寂しいんだ」「ふふん、任せて」「ルーグ様を一人になんてさせません」 本当にこの子たちと結ばれて良かったと思う。 俺たちは笑いあい、それから少し照れくさくなって俺は咳払いしてしまった。 ディアたちもそうらしく、話を本筋に戻そうとする。「それで、もしアラム・カルラが堕ちてない場合はどうするの?」「さらって匿う。アラム・カルラを抑えていれば、教皇が何を言おうが痛くも痒くもない。アラム・カルラは女神に選ばれた巫女だが、教皇なんてただの役職だ」 俺は笑って見せる。 アラム・カルラを手に入れれば、一気に有利になる。教皇が魔族だと言わせることもできるのだ。「……あっ、あの、それって、聖地に出向いて、世界で一番警備が厳しい大聖堂に忍び込んで、人一人抱えて、脱出するってことですよね。それも正体がばれないようにして」「うわぁ、そんなことできるの?」「やってみせるさ。やらないとならない。なに、その後に教皇に化けた魔族の暗殺なんて、冗談のような超高難易度ミッションがあるんだ。これぐらいこなせないと話にならないさ」 面倒な仕事だがやってみせよう。 まずは通信網を使い、アラム・カルラを匿うセーフハウスと物資の確保を聖地で行わせながら、俺自身も旅支度する。 時間との戦い。 だが、慌てずにやるべきことを最速でこなしていく。 久々に暗殺者らしい仕事だ。 完璧にこなしてみせよう。