もしにおいを説明するのに、「いい香り」と「臭い」しか言葉がなかったら寂しい。そのにおいを相手に伝えたいと思えば、それと似ている香りを探して、「バラの花のような香りがする」とか「卵が腐ったみたいなにおいがする」と表現することができる。つまり、何かほかのものにたとえることによって、相手はそれがどんなものかイメージすることができるのだ。そのおかげで私たちの表現は一層豊かになる。
いわゆる格言、名言と呼ばれるものの中には、このようなたとえを使ったものが少なくない。「人生はいわば航海のようなものだ」とよく言われる。人生のような抽象的なものでも、航海にたとえることで、それがどんなものかがよく理解できる。作家のセネカは人生を物語にたとえて、こう言ったそうだ。「重要なのはどんなに長いかということではなく、どんなに良いかということだ」。短い言葉の中にも重みがある。人生を蝋燭にたとえて、細く長く生きるのと太く短く生きるのとどちらがいいかと聞いたら、セネカはきっと後者がいいと答えるだろう。
哲学者のショーペンハウアーはお金は海水のようなものだと考えて、「飲めば飲むほど、のどが渇く」と言った。外にも友情とは何か、恋とは何かなど、いろいろなことについて格言、名言がある。それらを読んでみて、自分の好きなせりふを見つけるのもいいが、気に入ったものがなければ、自分で作ってみてもいい。人によって考え方はいろいろなのだから。