「おお~、ありがとうな、ベル。久々に本格的な狩りができて、嬉しいだろう」「……」 話しかけても黙っている彼女は、獲物を置くと、プイとまた森の中へ消えてしまった。「あれは機嫌が悪いのだろうか?」 ベルからもらった獲物は、アイテムBOXに入れておこう。 料理ができて、一番最後に起きてきたのは、アマランサスとリリスだ。「ケンイチ! しとねを共にした朝は、男の優しい言葉で起こすがよいぞ!」「そりゃ、気がつかなかったなぁ。あまりに気持ちよさそうに寝ていた姿が可愛かったからさ」「な……そういうことは、誰もいない場所で言うがよい!」 リリスの顔が真っ赤になっているが、こういう顔は初めて見たかも。 メイドを一緒にいじめようぜ! なんて言っているお姫様が、こういうことで恥ずかしがるのか……。「むー」 俺とリリスを見たアネモネが不機嫌なので、あとでなだめないと。 飯を食いながら獣人が予定を聞いてきた。彼女たちも、なにをするのか気になるようだ。「旦那、これからなにをするんだい?」「にゃー?」「とりあえず、砂糖を作れる草を植えて、畑を整備して――家を建てる」「家? また、あの家と同じやつかい?」「ああ、いつまでも天幕ってわけにもいかないし、とりあえず住む所が必要だ」 本格的な屋敷や家を建てて使わなくなったら、物置小屋にでも転用すればいい。「けど、すぐに屋敷を建てる算段をしないとダメだろうな。そこらへんはマロウ商会を頼ろうと思う」「無難じゃな」 リリスがゆで卵を頬張りながらつぶやく。「しばらく紋章官の仕事もなさそうだな」「ケンイチ様、どんな仕事でもお手伝いいたしますが……」「まぁ、無理しなくてもいいぞ。アストランティアから人手は集めてくると思うし」「そうですか――お手伝いできることがあれば、なんなりとお申し付けください」「その時はたのむ」 まぁ、まだ慌てる時間じゃない。時間はたっぷりとあるのだ。 俺の心情的には、まだまだ余裕だが――俺についてきた者たちのために、生活環境は早急に整えないとな。 俺たちの故郷を作る計画がスタートしたが、途中で頓挫する可能性もある。 難しい事業になると思うが、小さい村を作るぐらいはできるだろう。 朝飯を食い終わったので、早速仕事に取りかかる。 メイドたちには、草刈りの続きをしてもらう。ちょっと留守にしていただけで、草がボーボーになっているのだ。 鍬くわと鋤すきも渡して、畑もおこしてもらい、トウモロコシの取り込みもしてもらおう。