「なるほど。謙虚なのですね。いまだ未熟な身と。応援しておりますよ。――それでは、バークス様。王都を散策することがありましたら、ぜひ我が商会へいらしてください」「はい。機会がありましたら」商人男性と笑顔で型どおりの挨拶を交わし、おれは人々の輪から一旦抜け出した。息をつく。察知した人の気配に、振り向いた。「……なんだ、デレクか」「なんだとはなんだ。シル、随分だな」過去、おれはセリウスから彼の友人を何人か紹介されている。不思議なもので、その中でいまでも気安く――軽口をたたけるぐらいに――話すことができているのが、初対面からあるときまで、おれとセリウスの関係に一番批判的だったデレクだ。さきほどまでデレクを囲んでいた出席者たちが思い思いの方向へ散ってゆく。「――あの男は?」デレクが、おれが別れたばかりの商人男性を目線で示す。彼はウィンフェル子爵に挨拶をしていた。そこに子爵の婚約者が加わって――表向き話が弾んでいるようだ。「……外国人らしい。カンギナ生まれの商人だと言っていた」