空気が一瞬にして凍り付く。 ドン引きだ。路地裏にいる全員が、この合羽女は頭がおかしいのだと直感した。 ……ただ、セカンドだけは、どうにも様子が違う。 彼は「へえ!」と一言、興味深そうに、こう続けた。「女にここまで言わせる男なら、さぞかし凄いんだろうなあ?」 セカンドの視線は、合羽の女ではなく――上。 屋根の上に潜む、合羽の男へと向けられている。「こっちを見なさい! 首に刺さるわよ! ほら、早く明日負けると誓いなさい! 誓え!」「まあまあそう焦るなってー」 牙を剥き出しにする合羽女と、突如として何故か上機嫌になったセカンド。 この状況でどうしてそんなに明るい声を出せるのか。 アロマにとっては、合羽女の狂い様よりも、首に突き付けられている短剣よりも、そちらの方が余程気になって仕方がなかった。 そして、セカンドは、更に意味不明な言葉を口にする。「――よし、じゃあ、プレ天網座戦と行こうか」