「母上!」 俺の盾になろうとしている王女とアネモネを抱いて後ろへ飛ぶと、アイテムBOXからバナナとエナジーバーを取り出して、食べ始めた。 これで間に合うかは解らんが、とりあえずエネルギー補給のために食うしかない。 謁見の間にいた騎士団にも緊張が走り――俺の後ろにいた、アキラたちも戦闘態勢に入り周りを牽制している。「ハ○エース召喚!」 アイテムBOXから出した車に、プリムラとアンネローゼさんが乗り込んだ。「ベルは、彼女たちと一緒にいてくれ!」「にゃー」「アネモネは、プリムラたちを守ってくれ!」「ケンイチは?」「俺は、獣人たちとなんとかする! アキラ! 後ろを頼む」「任せろ! クレメンティーナ、突っ込むんじゃねぇぞ!?」「解っている! そんなに私が愚かに見えるのか?!」「どこに、そう見えない理由があるってんだ。センセも頼みますよ」「ふぅ……結局、どこへ行っても、似たようなものなのですね……」 必死に対応している俺たちを見て、王妃が高い笑い声をあげた。「ほほほっ! 一撃で首が飛んだかと思うたが、聖騎士になったというのは本当なのじゃな!?」 くそ、なんで俺を狙ってきたのか解らんが、やりやがったな。どう見ても本気だったろ。 もう手加減しねぇぞ。 俺は、バナナを食いながら王妃に答えた。「ムグムグ――王妃様! 前におっしゃられてましたが、ムカついたら反撃してもよろしいのですよね?!」「ほう! 面白い! 妾とやろうというのかぇ?」「やるに決まってんだろ! このピーのクソアマ!!」 俺は、食っていたバナナの皮を、王妃の足元に投げつけた。「この痴れ者が!」 アイテムBOXから武器とポリカーボネートの大盾を出すと、横にやって来た獣人たちに手渡す。 俺の目には王妃が接近したのが解らなかった。こんな素早い化物相手じゃ、重機を出しても追いつかないだろう。 有象無象の多人数を薙ぎ払うなら、重機は使えるが――相手は一人。「ミャレー、ニャメナ! 訓練通りだ!」「わかったにゃ!」「任せろ旦那!」「ほほほ! 獣人ごときで、妾が止められると?!」「その前に、一つ頼みがある!」 突然の俺の願いに王妃は意外だったようで、動きを止め驚いた表情を見せた。「なんじゃ、申してみよ」「騎士団を突っ込ませるのは止めていただきたい。人死を増やしたくありませんので」