「お前は強大な力を手にしておきながら、何かが致ち命めい的てきに欠けている。ずっと不思議に思っていて、そこに惹ひかれていた。だが、存外単純な話だったのだ。お前は良くも悪くも純じゆん粋すいな子供にすぎなかった。今日、そのことに気づいた。だから、そんなそなたを巻き込むわけにはいかない」 と、シルヴィは蓮司に言い聞かせる。「そんなことはないっ! 俺は十七だ!」 蓮司は心外だと言わんばかりに叫さけんだ。 日本ではともかく、十七歳さいといえば形式的にはこの世界ではとっくに成人扱あつかいされる年齢である。かくいうシルヴィも十八歳だ。だからこそ、蓮司は年齢を根こん拠きよとした。「そうやって年齢を根拠にしてくるところが子供だ」「ち、違ちがう! 俺を子供扱いするな!」「違わないさ。人に責任を押しつけるくせに、自分には責任感が欠片かけらもない。だから子供なのだ」「そんなことっ!」「現にレイスとの約束を破って逃げようとしているではないか」「それはっ……」 蓮司は不服そうな顔で、言葉に詰つまってしまう。「いいか、レンジ。これは忠告でもある。お前は何の努力もせずに、神装によって強大な力を与あたえられてしまっただけの子供だ。だから、ちぐはぐなのだ」 シルヴィはきつく言い放ち――、「お前は社会に溶とけ込んで暮らしながら、社会的なしがらみを忌き避ひしている。都合の良い時だけ社会的な恩おん恵けいに与あずかって、都合の悪い時は力をかざして道理をねじ伏せている。そんな生き方をしていた。しかし、それがまかり通らない場面に遭遇した結果が今だ。社会的なしがらみを嫌きらっておきながら、社会的な恩恵に与ろうなどと、そんな都合のいい生き方がいつまでもまかり通ると思うなよ?」 怒ど気きを込めて、蓮司に凄すごんだ。「…………」 蓮司は固かた唾ずを呑のんで押し黙る。「そなたよりも強い者も存在する。現にそなたは敗北した。個人ではそう簡単に後おくれは取らずとも、人は集団になれば脅きよう威いだぞ? そのことを教えてやる」「……?」