お前はもっとガンガン行く感覚的なスタイルのはずだ。定跡や戦法なんか使っちゃあ駄目だ。頭を使っちゃあ駄目だ。お前はそんなんじゃなかったはずだ。もっと本能から勝負を楽しんでいたはずだ。無我夢中で遊んでいたはずだ。その目は、もっと輝いていたはずだ。 体裁を気にするな。見栄えを意識するな。余計なことは何も考えず、楽しむことだけに没頭しろ。もっともっと集中できる。子供の頃を思い出せ。お前は違う。そんなんじゃない。「凄えよお前は。センスも抜群、技術も一流、大したもんだ。敗因は、俺の松明対策を見抜けなかったことと、自分よりリーチの長い糸を相手に戦い慣れていなかったこと。お前なら既に気付いているだろう。強いな。全く強い。だが……強いだけだ。お前にそのスタイルは合ってない。お前には、もっとお前らしいやり方がある」「……うるせぇーな」「お前のその龍ノ髭を持ち替える戦法、ツンデレ戦法という」「!?」 俺がその言葉を出した瞬間、プリンスは目を見開いて驚く。「り、リンリン先生を知ってんのか!?」「誰だよ。知らんわそんなやつ」「……はぁ?」「俺が知ってんのは――ああ、いや、そうか」 この世界に来ているやつらは、高橋さん以外皆“サブキャラ”だったな。名前は変わっていて当然か。それに、もし元の世界での名前を名乗って活動していたとしたら、今頃嫌でも目立っているはず。つまり、偽名を使ってあえて目立たないように活動している可能性もある。 プリンスに松明とツンデレ戦法を教えたリンリンという人物。間違いなくプレイヤーだ。それも、予想が正しければ、俺のよく知っている世界ランカーの。「いいか、そのリンリンとやらに惑わされるな。お前にはお前の楽しみ方がある。だから……あまり勝利に執着しすぎるな。俺が言いたいのは、それだけだ。長々とすまない」「…………」 《龍王糸操術》の準備が終わる。 プリンスは、黙って最後の話を聞いてくれた。 少しの間でも、俺たちは、心の底から笑い合って遊べたんだ。 それを、プリンスもきっと、心地よく感じていてくれたのだと、俺はそう思っている。 だからこそ、少しばかり、この新たな友にお節介を焼いてしまった。「――それまで! 勝者、セカンド・ファーステスト!」 六冠達成。 まあ、それは置いておいて……。「ズルは、ズルだからなあ」 気絶したプリンスをパンツ一丁にひん剥いて、体に油性ペンで「女の子にイイトコ見せようとして自作自演しましたごめんなさい」と書く。 パクリ呼ばわりは、これで許してやろう。