本を読んで解ったのは、単純にサラダ油からグリセリンだけを抜けばいいという物ではなく、燃料生成のためにはアルコールとアルカリを使ったエステル化は必要なようだ。 これは生成の方法を変える必要がある。 先ずは、サラダ油にアルカリとエタノールを投入して、エステル化を行う。 そいつを魔道具の上の皿に乗せて、真ん中の皿には既に出来上がったバイオディーゼル燃料を入れる。 すると当然、両側から液体が滴り始める。左側から落ちるのは出来上がったと思われるバイオディーゼル燃料。 そして、右側にはドロドロのグリセリンを含む不必要な成分が滴る。これでいけるはずだ。 実験で出来た燃料をディーゼル発電機へ投入してみたが、問題無く稼動し始めた。「ふう……いきなり重機に試さなくて良かったぜ」 高価な重機をぶっ壊すところだったな。何事も経験ってやつだ。 ------◇◇◇------ 魔道具の実験が上手くいったので、畑の世話をする事にした。 トマトが大きくなっているので、脇芽を取って挿し木にする――こうすれば、どんどん増やす事ができるのだ。 シャングリ・ラでメ○デールという薬品を買う。挿し木にはこいつを使う、定番商品だ。 畑に虫除けの魔石を置いているので、結実のための虫媒は望めないな。ト○トトーンも買っておくか……。 シャングリ・ラを眺めて、色々と思案していたのだが――なんだが、森がざわついているような――なんだろう。 すると、何かの叫び声が聞こえてきた。「ふぎゃぁぁぁぁ!」 この声はミャレーか?! 何だ一体? バキバキと枝が折れる音を出して、草が激しく揺れると、ミャレーが飛び出してきて俺の後ろに隠れた。 そして、その後ろには巨大で真っ黒な生物がくっついてきているではないか。「ガアァァァッ!」 黒い巨躯を怒らせ毛むくじゃらの怪物が4脚を踏ん張り、デカい牙を剥きだして俺たちを威嚇する。 ――それは巨大な熊。しかし元世界のヒグマより巨大で、長く鋭い牙が口からはみ出ているのだ。「うあぁぁぁ!」 俺は腰を抜かして畑に手を付いたのだが――熊と俺の間に黒い影が素早く割り込んだ。「フシャァァァッ!」 負けじと牙を抜き出して敵を威嚇する黒くしなやかな身体――俺の前に現れたのはベルだった。 彼女が牽制している間、俺は体勢を立て直すとアイテムBOXから、クロスボウを取り出した。 何台かのクロスボウには非常用として、矢が装填されたままになっている。 クソッ! これじゃトレイン*1じゃねぇか!