「あ、まあ、う、うん、少し伸びたかな」 と言ったアラン。 なんていうか、顔が赤い……? え、もしかして、さっきの私の体当たり、結構痛かったのかな……。「あ、すみません、さっき私がぶつかったところ痛みますか?」「い、いや、違う。そういうんじゃない。……悪い、突き飛ばして」「あ、いえ、なんともないなら、別にいいんですけど」 と答えながら釈然としない気持ちでいたら、「リョウ!」とまた名前を呼ばれてそちらに顔を向けた。 まあ! あちらに爽やか笑顔でお手を振っていらっしゃるのは、我らがフォロリストのカイン様じゃないですか! こちらに駆けてくるカイン様が、軽く腕を広げたので、私はその胸に飛び込み再会の抱擁をした。「カイン様! ご無事でなによりです! あの後! ルビーフォルン邸まで私を送っていただいた後は、大丈夫でしたか? 問題ありませんでした?」「大丈夫だったよ。リョウも、元気そうでよかった」 私とカイン様はひとしきりお互いの無事を喜び微笑み合う。 手紙で無事にレインフォレストの屋敷についたことは知っていたけれど、こうやって無事な姿を見れてほっとした。 私を送ってもらったその帰りの道中に何かあったらって思うと辛かった。 アランもカイン様も笑顔だし、レインフォレスト家は大丈夫そうだなって、カイン様の爽やか笑顔を見ながらほっとしていると、横からぬっとアランが割り込んできた。「リョウ、お母さま達が待ってるから屋敷の方に行こう」「あ、はい。アイリーン奥様もお元気ですか? お会いするのすごく楽しみです」「元気だ。リョウに会えるのを楽しみにしてる。ただ、少し魔物に足をやられて、杖を突いて歩いてるけどな」「え? 杖を突いて?」 アランがそんなことを言うので驚きで目を見開いた。 魔物に足をやられてって……!「大丈夫だよ、リョウ、そんな心配そうな顔をしなくても。軽い怪我なんだ。治療師の話ではしばらくすれば普段通りに生活できるようになるって言われている」 頭が真っ白になった私を気遣ってカイン様がフォローしてくれる。 あ、そうなんだ。それは良かった、けど……。 知り合いが怪我をしてしまうと、ついつい魔法で治せるかもって思ってしまう。 これからのことを考えれば、そんなことしてはいけないことだと分かっているのに、治せるのに治そうとしないのがあまりにも無情に感じてちょっと辛い。 私はアイリーンさんの傷を治してしまいたいという誘惑にも似た気持ちを抑えて、改めてアランに向き直った。「やっぱり、奥様も一緒に結界の修復に行かれたんですね?」