わたしは目を閉じるとレオノーレに頼んで、わたしの手をシュバルツ達の魔石へ誘導してもらった。シュバルツとヴァイスに魔力を補充し、衣装のボタンにも魔力を流して戦闘モードにしておく。二度とラオブルートを入れるつもりはない。「シュバルツ、ヴァイス。図書館の司書であるソランジュ先生を守ってください。協力者として登録されておらず、図書館の鍵を持つ者が入ってきたら必ず鍵を取り返して追い出してくださいね」「ソランジュ、まもる」「かぎ、とりかえす」 わたしはシュバルツ達にお願いすると、閲覧室へ行ってフェルディナンドのいる二階を見上げた。すぐにフェルディナンドが駆け下りてくる。その表情と足の速さから懸念が当たっていたようだ。ジェルヴァージオはすでに始まりの庭にいるらしい。「ローゼマイン、君は騎士達と離宮へ戻れ」 指示を出しながら階段を下りてくるフェルディナンドを見上げながら、わたしは首を横に振った。「嫌です。一緒に行きましょう」「危険だ。離宮で待っていなさい」 わたしの前を通り過ぎてフェルディナンドは閲覧室を出ていこうとする。その背中が一瞬アーレンスバッハへ向かうフェルディナンドの姿と重なった。喉がひくっとなって、思わず手が伸びる。「待ってください! わたくしを置いて行ったら、フェルディナンド様の秘密を皆に暴露しますからね!」「この緊急時に何を言っているのだ、君は!?」 顔を引きつらせたフェルディナンドが振り返る。「待っていられるわけがありませんし、魔力は多い方が良いでしょう?」「魔力? 何を言っている?」「え? フェルディナンド様が昔やったこととではありませんか。大魔力をぶつけて最速で突っ込むのですよね?」 エアヴェルミーンからお行儀が悪くて不敬だとめちゃくちゃ叱られるかもしれないけれど、最速で始まりの庭へ行くにはそれが一番だと思う。空中の魔法陣に大魔力を叩きつけて起動させて突っ込むのだ。「何という過激なことを考えているのだ……」「えぇ!? すでにやっちゃったフェルディナンド様だけには言われたくないですよ」 頭を抱えていたフェルディナンドが諦めたように溜息を吐くと、大股で近付いてきて、わたしを肩に担ぎ上げた。そのまま大股で歩き始める。呆気に取られていた護衛騎士達が慌てた様子でついて来た。「言っておくが、私は何とか魔法陣を起動させようと思っただけで、あの場に突っ込むつもりはなかった。結果がわかっていて突っ込む君と一緒にするな」「訪問される側から見れば一緒だと思いますけれど?」 正規ルートではないところから突っ込んできた者の思惑などエアヴェルミーンには関係ないと思う。不慮の事故でも故意でも叱られるものは叱られるはずだ。「……それもそうだな」 クッと笑ってフェルディナンドが図書館を出る。騎獣を出して、わたしを乗せた。「最速で行くぞ、ローゼマイン」「はいっ!」図書館へ行きました。ソランジュ先生が大変な目に遭っていました。オルタンシアも。ジェルヴァージオを追いかけます。次の更新は12/12頃です。詳しい事情については活動報告に上げます。