それはもちろん、備蓄食料の調達だ。お菓子やカップ麺等は庶民派スーパー、たまに立ち寄る高級スーパーでは夜食に食べるお惣菜や輸入お菓子と、用途によって使い分けもしている。来店の狙い目はポイント5倍デーの日だ。「…市場調査ですわね」「市場調査ぁ?」「各家庭の食卓を知ることは、それすなわち今の日本を知ることとなるのですわ!」 私を見る鏑木の目が、疑わしげに細められた。「コンビニと何が違うんだ」「まぁっ、なにをおっしゃいますやら!品揃えが全く違いますわ!」 スーパーにはコンビニにはない、ファミリーパックのお菓子があるのだ。あぁ、魅惑のファミリーパック…!「そういうところですわよ、鏑木様」 私が嘆かわしいというように頭を振ると、鏑木はムッとした顔をした。「よし!だったらこれからスーパーに行くぞ!」「は?」 鏑木は立ち上がると、今にも私を引っ張ってスーパーに直行しそうな勢いで宣言した。「高道が興味を持つスーパーを俺も体験したい。その市場調査とやらも手伝ってやる。ほらっ、お前も早く立て!」「なっ、ちょっと待ってください。私は今日は塾の予定が」「塾?」「ええ」 気勢をそがれた鏑木は不満顔だ。しかし譲らん。もうすぐ中間テストだぞ。勉強しろよ。「…わかった。じゃあ、いつならいい」「中間テストが終わってからでしたら…」「遅すぎる!明日は?じゃあ週末は?」 明日、週末って…。皇帝、さてはあんた、暇人だな。哀しい。実はスケジュール真っ白な瑞鸞の皇帝。切ない。うぷぷ。「なんだよ、その目は」「いいえ、別にぃ」 おほほ、ごめんあそばせ。ワタクシ予定が詰まっておりまして、なんとか開けられても来週になりますわ~。お暇な人が羨ましい~。「そんなに行きたければ、おひとりで行くか円城様を誘って行けばよろしいのでは?」「…俺と秀介でスーパー行ってどうすんだよ」 ふてくされたように口を尖らす鏑木にちょっと笑いつつ、私は会議室のドアを開けた。 しょうがない。普通の高校生のデートスポットをリサーチしてきてやるか。