バボボボボ……! あちこち角度の変わる突風に、ビニール袋は騒がしい音を立てる。それを持つ女性は、黒髪を好きなよう風に弄ばせたまま周囲を眺めた。 公園の木は大きくゆがみ、道路へ大量の葉を散らす。手を引かれていたマリーも、顔を背けながらでないと歩けなくなってきた。 ぼつっ、ぼつっ、と頬へなにかが当たり、あっという間に雨粒を撒き散らす。風の音はより重い音へ変わり、エルフは瞳を見開いた。「わっ! 降ってきた降ってきた! 急ぎましょ!」「おお、なかなかの勢いじゃのう。どれ、手を離したら小さなエルフが飛んでゆくかもしれぬぞ」「いやあだ、もうっ!」 どすんと背中から抱きついて来られたので、意表をつかれたウリドラは、とても愉快な気持ちになった。 空を流れる雲は、まるで先ほどの川のように早い。しかし、シャツに雨粒が当たり、肌を伝い流れてゆく様はいつもの雨よりずっと楽しい。 大きな笑い声と、そして「きゃああ!」という悲鳴は、豪雨の音を跳ね返すような賑やかさだった。「ああ、雨がっぱなんて台風の前には無力ね……。着た意味が無かったわ」 雨で張り付いた衣服を、ぐいーっと浴室で脱ぐ。 たっぷりの水を含んだ服は、すぐに脱ぐのは難しい。素肌へひんやりとした空気に触れられ、水滴がてんてんと垂れてくれば背筋はぞくりと震えてしまう。 浴室の明かりが漏れ、見ればウリドラはシャワーのコックを捻っている所だった。勢い良く温水は溢れ、浴室に湯気が登ってゆく。「うーむ、すぐに温かい湯が出るのは贅沢じゃー」「ウリドラ、あなたもはやく服を脱いでちょうだい。これだけ濡れてたら、順番に入るなんて出来ないのよ」 少女の言葉へウリドラは頷き、グイとシャツとパンツを一思いに脱いでゆく。恥ずかしげもなく魅力的な裸体を見せられ、なぜか少女のほうが慌ててしまう。 あうあうと口を開閉し、そしてぽつりと文句を言った。「あなたはもう少し羞恥心を持つことね。伊豆の海に行くときは、ちゃんと更衣室で着替えないと駄目なのよ?」「ふむ? そんなもの、別に車のなかでも良かろう。ああ、分かった分かった、ちゃーんと更衣室を使おう」