「でも、今日の海斗凄くカッコイイ……」 俺が西条の可愛さに悶もだえていると、西条がなんだか色っぽい声を出しながらそんな事を言ってきた。 待って……ヤバい! 今日の西条どうしたの!? 本当に魅力的に見えてしまうんだけど!? 俺は西条の仕草にドキドキしているのをバレない様に、素っ気ない態度をとる事にする。「そ、そっか……そう言ってもらえると嬉しいよ……」 ……何処が素っ気ないんだ、俺!? 照れてるのバレバレじゃねぇか! 「えへへ――えい!」「――っ!」 西条は俺の言葉を聞いた後、いきなり抱き着いてきた。 俺はその行動に体が強張ってしまう。「あれ、どうしたの? いつもみたいに振り払わないの?」 西条はニヤニヤ――というわけではなく、照れ笑いの様な顔で俺の方を見上げてそんなことを言ってきた。 ……なんで今日に限って照れてるんだよ! いつも抱き着いてくる時は全然照れてないくせに! 俺は西条についそんな事を思ってしまう。 いや、確かにいつもなら西条を振り払っている。 今だってもし西条がニヤニヤしてたり、俺の事をからかっている素振りを見せていたら、俺は容赦なく振り払っていただろう。 だが――今の西条は、照れた表情を浮かべながら嬉しそうに抱き着いてきていた。 ……逆に皆みなに問いたい。『可愛い女の子がこんな表情をしていて振り払えるか!?』っと。 くそ! 黒髪系でこそないが、今日の西条は俺の好きな清楚っぽい感じだし、いつもと雰囲気が違うせいで俺のペースが狂わされまくりだ!「…………どうせ振り払ってもくっついてくるんだ。振り払うだけ体力の無駄だ」 俺はどうにか喉から言葉を絞り出した。「そっか……じゃあ、遠慮なく……」 そう言って、西条は抱き着いてる腕を更にギュッとしてきた。 俺の胸はドキドキしすぎて、今にでも張り裂けそうになっていた……。 俺の頭の中は、もう西条の事で一杯になってしまった。 西条は本当に俺の事を好きなのか? もしそうなら、咲姫の事を異性として好きになるという過ちを犯す前に、西条と付き合った方が良いんじゃないのか? ……いや、この考えは西条に失礼過ぎるよな……。 でも、今の西条は凄く可愛いと思う。 西条を一人の女の子として意識しだしている、俺が居るんだよな……。 ……仕方ないだろ? 今まで俺はボッチで孤独だったんだ。 こんな自分好みの可愛い子が好意を向けてくれたら、コロっといってしまっても仕方ないんだ! ……まぁ流石に、そこまでチョロくはないが。 ただ、本当にもう西条を雑に扱えないかもしれない……。 というか、最近咲姫の事も凄く可愛いと思うし、桜ちゃんは言わずもがな――西条までも可愛いって思うなんて、俺ちょっと節操せっそうなさすぎるだろ……。 俺は目的地につくまでの間西条と会話を交わしながらも、頭の中では自分の不甲斐ふがいなさを嘆なげくのだった――。