「それで北瀬様、ご予約は3名様だったようですが……」「ああ、急な飛び入り参加があったからね。もちろん僕は辞退するから、外国から遊びに来た彼女たちへ日本のおもてなしを見せてあげてくれないかな」 などと話していると、グイと腕を引かれてしまう。見下ろすとマリーは目を見開いており、ほんの少しだけ寂しそうな顔をしていた。「そんなの駄目よ、あなただけ外にいるなんて。可哀想で食事を楽しめないもの」「いやいや、僕としては皆に楽しんでもらえる事が何より嬉しいんだよ。そのことはマリーならきっと分かるんじゃないかな」 う、ん、と少女から困ったよう頷かれる。「……でも、隣にいて欲しいの。だって好きなのでしょう、私たちの楽しんでいる姿を見るのは」 眉尻をみるみる落としてゆく表情は、どこか胸を締め付けるものがある。 と、コースメニューを見ていたはずのイブは、いつの間にやら僕らのそのような光景を眺めていたらしい。何かを言いかけ、しかし言葉にはならず胸へ留まらせる。青い瞳は様々な感情に揺れているようだけれど、僕はまだ気づけない。「わかりました、こちらで少々お待ちください」 そう明るい声で言ったのは店員さんだった。 一礼をすると店の奥へと歩いてゆき、思わずマリーと瞬きしてしまう。彼女はわずか数分で戻ってくると、改めてぺこりと頭を下げる。「1名様分、追加のお席を用意させていただきました。では、皆様どうぞこちらへ」 おっと、さっそく日本のおもてなしを見せてもらえるとは。いやいや、それはこのテーマパーク全てに言えるかもしれない。誰しもがお客を喜ばせることを大事にしており、それが伝わってくるからこそ心地よい雰囲気に包まれていると思える。 おかげでマリーは明るい表情を取り戻し、ぎゅうと腕へ抱きついてくれた。 お財布へのダメージは高まることになったけれど、このような笑顔を向けられると……うん、やっぱり嬉しいね。 やはりこのレストランも普通ではなく、案内をされ扉をくぐると真っ暗な空間が待っていた。