べえっと舌を出しながら、そんなことを言われてしまった。見られていないと思っていたけど、さすがに竜に隠し事はできないか。いや、もしかしたら気を使っていてくれただけなのかな。 ちん、とグラスが合わされた。「悪くなかったぞ、愉快な一年じゃった。腹がよじれるほど笑ったし、そんな笑い声を出せてすっきりした。んむ、なかなか忘れられぬほどにな」 いつのことを思い出しているのか、くつくつと竜は笑う。思い返してみるとウリドラはよく笑う人で、よく怒るし泣いたりもした。それは僕の知っている古代竜とはまったく異なる姿で、そんな幻想を彼女はあっさりと砕いてくる。「じゃあ今年の一番を決めようか。ウリドラはなにが一番嬉しかった?」 たぶん最高級霜降り和牛だろう。あるいは第二階層の屋敷を作ったことかな? そう思っている僕に、ウリドラは意味ありげな瞳をする。グラスを卓上にことりと置き、黒髪を揺らしながらその美しい顔を近づけて……耳元にそっと囁く。「やや子を楽しみにしておるぞ」 はっ?と目を見開いた。 何かの冗談かと思っても、竜はにっこりと美しい笑みを見せている。視線をじっと合わせたままほつれた黒髪を耳にかけて、艶のある唇をそっと開く。「さて、そろそろ起こす時間じゃ」 はい?とまたも僕が首を傾げたときに、テレビからカウントダウンが聞こえ始める。 まだ胸がドクドクしているけれど、そういえば年が変わる前に起こす約束をマリーとしていたのだった。 慌てて少女の肩を揺すったけれど、むずがるように眉間に皺を寄せたきりで「ぐう」とまた寝息を響かせる。 ぺちんと手を払われた瞬間に「ハッピーニューイヤー!」という明るい声に包まれた。大して痛くはないけど手をさすりながら僕は呆然とする。「えぇ……?」 ぶふぉっと吹き出したのはウリドラで、腹をかかえて苦しそうにしているのはなぜなのか。さもありなん。魔導竜の爆笑と共に新年を迎えたわけだ。 もちろん出しそびれた年越しソバのことは……もはや何も語るまい。