オルネルが過去携わったモンスター関連の情報を頭から探すが、そんな情報は出てこない。そう聞くと、ティファは思い出すように言った。「アズリーさんの資料にあったのよ。確か二千年くらい前に絶滅したって書いてあったはず……」「ったく、何でアイツはそんな資料なんか持ってるんだよ!?」「知らないわよ! でも……確か双黒龍には弱点がない。そんな事が書いてあったような……」「何でだよ!? 竜族だろうと背後は死角。そうじゃねぇのか?」 ティファが指差す先。 オルネルはその先に双黒龍の尻尾を見た。「その理由が、アレよ……」「……っ! あれは尻尾じゃない! 首か!」 前後に生える首に気付いたオルネル。 目を細めるマイガーが舌打ちしながら速度を上げる。「ありゃ強ぇな……」「あぁ、あれはランクAを超えている」 マイガーの灰色の毛を強く握るオルネル。 その意図を感じ取ったマイガーは、それ以降、軽口を叩く事はなかった。 オルネル、ティファのこれまでの戦闘。その討伐モンスターの中にランクSに該当するものはない。 正面に見える双黒龍。ランクSの上位に存在するであろう存在を前に、オルネルとティファは魔法士。タラヲの戦闘力では一秒ともたない。近接で交えるであろう存在はただ一人、己自身。 伝説の霊獣「灰虎」の化身と呼ばれるマーダータイガー。誇り高い種族故か、マイガーは巨大な存在を前に怯む事も、二の足を踏む事もなかった。 睨むように鋭く双黒龍を見据え、心を、魂を奮わせて速度を上げた。 程なくしてポチズリー商店の屋根をオルネルが捉える。 そしてオルネル、ティファ、タラヲ、マイガー四名の耳に届く、聞き慣れた声。 イツキの悲鳴が響く。