ドアを開けると陽はとっぷりと暮れており、どこか冬の香りが混じり始めたのを僕は感じる。マンションの通路にはシンとした静けさがあり、無機質な明かりはそれを助長しているかのようだ。「ほれ、北瀬。ぼうっとしておらずにドアを支えぬか。羽があるわしらは引っかかりやすいのじゃぞ」「気を付けてねウリドラ、それにシャーリーも」 慌てて靴――じゃなかった、下駄を履いて悪魔、そして天使を外へと案内する。2人とも異なる種類の笑みを見せ、ほんの少し内気なシャーリーは蜂蜜色の髪を整えながらはにかんでくる。 輝かしいとさえ思えるのは、きっと頭上にある天使の輪のせいだろう。花嫁のように髪の毛をヴェールで飾り、やや丈の長いスカートは華奢な腰へ集約されていた。