ムラッティは「ぐへへへ」と実にいやらしい笑みを浮かべながら紙をインベントリに仕舞って立ち上がった。そわそわと落ち着きのない様子は、早く帰って中身を読みたくて仕方ないといった風である。「またな。今日は楽しかったぞ」 玄関を出て、別れ際。俺は一言だけ、笑みを浮かべながら伝えた。 素直な気持ちだった。チームの後輩にメヴィオンをレクチャーしているようで、何だか昔を思い出したのだ。それだけではない。ムラッティの口から出てくるメヴィオンとはまた違った考え方の分析が、率直に面白いと感じたのである。「あ、う、え……せ、拙者も、楽しかった、です。で、ではまた!」 ムラッティはどもりながらもそう答えると、お辞儀と敬礼をして去っていった。 あいつと【魔術】以外の話題で盛り上がれるようになるのは、まだまだ先だろうなぁと、そんなことを考えながら、俺はそのでかくて丸っこい背中を見送った。 ……夏季叡将戦、期待しているぞ。