「この珍妙なものが、食い物だと言うのか?」「うるせぇクレメンティーナ! お前は、そこらへんの草でも食ってろっつ~の!」「私は食べてみますわ。いえ、アキラ様のお食べになるものは、私も食べなくては」 そんなことを言いつつ、アンネローゼさんが、唐揚げをつまむ。「美味しいですわ!」 そりゃ、唐揚げは道端で売っても人気になるぐらいだから、この世界の住民にも十分に受ける。「アキラ、ゴミは一箇所に固めて置いてくれ。俺が処分するから」「オッケー」 だが、アキラたちの食事をみていたアネモネが、俺のシャツを引っ張った。「ケンイチ、私もアレが食べたい」「それじゃ、ちょっと早いが夕飯にするか~。獲ってもらった鳥さんは、アイテムBOXに入れておくとしよう」 シャングリ・ラから、アキラに買ってやったものと同じセットを買うと、大皿に全部開けて、アネモネの魔法で温めてもらう。「温め(ウォーム)!」 魔法で加熱された料理は、すぐにホカホカの湯気を立て始めた。「ねぇ旦那――俺もエールを飲みたいんだけど……」 ニャメナが、エールをご所望なので、出してやる。「やったぁ!」「ケンイチは、トラ公に甘いにゃ!」 皆で唐揚げと餃子を食べる。米が食える人は、チャーハンを食う。「ケンイチ、このパラパラの料理は?」 リリスが、チャーハンを見つめている。「リリスがいつも食べていた穀物を、さらに油で炒めたものだよ」「ほう――むぐむぐ、む! これも美味いの!」 彼女は、なんでも食うなぁ。チャーハンを食べるとスープが欲しくなるので、アイテムBOXに保存していたものを出して、皆に配る。 今日は、できあいの料理で終わりだな――ほっとしていると、リリスがえらい勢いでチャーハンを食べ始めた。 和気あいあい、俺の家族とアキラの家族で飯を食べていたのだが、皆の動きがピタリと止まった。 リリスは、チャーハンを掬ったスプーンを持ったまま固まっている。「ん? どうしたんだ、皆?」「おい、ケンイチ」 アキラの声に後ろを向こうとすると、いきなり誰かに抱きつかれた。 甘い匂いと、それに混じる辛子の匂い。そして伝わってくる温かい体温。「聖騎士様――」「おわっ! 王妃!!」 俺に抱きついていたのは、白いドレスの王妃だったのだ。