「なかなかアランの婚約者が決まらないのよ。この子はいつか私の後を継いでもらうし、早く決めたいのだけどね。いい縁談の話はたくさん来ているの。でも本人が乗り気じゃなくて」「まあ、まだまだご子息は若いですし、そのようなものでしょう」 とバッシュさんは朗らかに笑いながら対応すると、アイリーンさんが来ている縁談について色々と話し始めた。 先ほどの女の子は、魔法使いではないにしても、魔術師の血筋の由緒正しい家柄の女の子で、アイリーンさんのイチオシだったらしい。 そして彼女以外にもアランにはすでに100件近くの縁談があるとか。 すごすぎる。 そういえば、アランって奴は魔法使いでもあり、伯爵家でもあるということで、かなりの注目株。 10歳ぐらいの時からすでに縁談の手紙が来ていると聞いて、驚いた覚えがある。「アランは、そんなにたくさん縁談が来てるんですか?」 私は思わず隣にいたアランにそう問いかける。 さっきまで、べらべらと縁談の話をしゃべっておられるアイリーンさんに呆れたような顔をしてみていたアランだったけれど、私に問いかけられたことに驚いたらしく背筋をピンとさせた。「い、いや、話は来てるみたいだけど、俺は……!」 と何か勢いをつけてアランが言おうとしたタイミングでアイリーンさんが、興奮した様子で話に入ってきた。「そうなのよ! たくさん縁談の話はきているの! まだまだ先のことと思って保留にしていたけれど、いつの間にかもうすぐ成人でしょう? 早くいい人を決めないと」 アイリーンさん、顔が近い。相当アランの縁談のことが気になっているご様子だ。 アランは、呆れたようにため息を吐くと、「だから、俺は興味ないです」と答えた。 分かる。その気持ちわかる! まだそういう気分じゃないよね! 婚約とかなんとか、言われても全然わかんないっていうか、ピンとこないよね! 興味がないってわけじゃないけど……。 だって、まだ好きな人だってできてないし……恋とかだって知らないでしょう? それなのにねぇ。