部屋は薄暗く、窓の外からカーテン越しに白い光が差し込んできていた。夏の日差しは朝から容赦なく大地を照りつけ、今日もまたうだる暑さをもたらそうとしていた。
――リリリリリ……。
枕元で目覚ましが鳴っている。四角い置き時計の安っぽい電子音。俺はベッドから音の方向に腕を伸ばし、二、三度手をバタバタさせてからそれを止めた。
「うーん……」
そろそろ起きないといけないらしい。夏休みに入ったからもう学校はないが、今日は恵と二人で朝から出かける予定だった。最近は俺が部活でなかなか都合がつかなかったから、やっと二人一緒に行けるってあいつも楽しみにしてたっけ。昨日寝る前もソワソワしてたが、そんなところも可愛いと思う。言うと怒るから言わないけど。
何とか目が覚めた俺は上半身を起こし、寝床の上に座り込んだ。
外からはセミの鳴き声がやかましく聞こえてくる。梅雨が明けてしばらく雨が降っていないから、地面もすっかり乾ききっているだろう。夕立でもくればいいのにな、と心の隅で思った。
俺の名は水野啓一。公立高校に通う十七歳の男子生徒だ。部活はサッカー部、一応レギュラー。家族構成は両親と俺、双子の妹の四人。つき合ってる女はいるが、それがその妹、恵だったりするあたりが俺たち兄妹の異常さを物語っているかもしれない。説明すると長くなるが、とにかく色々あったんだ。
まあそんな訳で、本日は部活もないから恵と久しぶりのデートだ。映画を見て買い物につき合って、一緒に晩飯を食って帰る。綿密な計画を立ててる訳じゃないから適当に、まさに行き当たりばったり。肩の力を抜いて気楽に過ごすつもりだった。
あくびをして腕を真上に伸ばす。寝苦しい季節ではあるが、部屋のクーラーは涼しげな空気を存分に供給してくれていた。贅沢と言えば贅沢だが安眠には欠かせない。今年は特に猛暑が続くそうだから尚更無いと困る。
「ふあああ――さて、着替えて用意しないとな……」
珍しく恵の手を借りずに起きれた。というのも妹が起きるのはいつも俺より早く、俺は毎朝あいつに起こしてもらっているのだ。しかし高校生にもなって毎回それではなんか悪いし、もちろん気恥ずかしさもある。たまには恵が来る前に支度しといてもいいだろう。俺は寝床から出ようと顔を上げ――。