「ラフィニア! おめでとう! お母さん嬉しいわ!」「ラニ! 凄いよ! よくやったね! これから弓の練習を沢山しなきゃね!」「はっははは! いいぞラフィニア! お前が上級印を授かってくれるなんて、これで我がユミルの将来も安泰だ!」 ラフィニア一家がわっと盛り上がっている。「ラファエル様が特級印に、ラフィニア様が上級印か……! 素晴らしいご兄妹だ、お仕えのし甲斐があるな――!」 父リュークも感心して頷いている。「そうね、立派だわ――!」 母セレーナも同じくだった。「おめでとう、ラニ。これでラニも立派な騎士様になれるよ」「うん! これで大きくなってもにいさまやクリスと一緒にいられるよね!?」 ラフィニアはラファエルやイングリスがすごい騎士になると思い込んでおり、自分も一緒にいるために騎士になりたい、と言っているのだ。「そうだね」 と、応じておく。 ラファエルは確定だろうが、イングリスとしては別に騎士に拘りは無い。 常に魔石獣などの敵と戦わせてくれるならいいのだが、あまり騎士として手柄を立て過ぎると、指揮する側に回され前線に立てなくなっていくものだ。 前世ではそういう流れから、周りの人達のためと期待に応じ続けているうちに、国王になっていた。 別にその事を後悔はしていない。 一生をかけてそれをやり切ったのは、自分にとっての誇りでもある。 だがだからこそ、前世と同じことの繰り返しは避けたいのだ。 騎士になってもいいが、あまりに偉くなりそうだったら、辞めて傭兵やランバー氏のような武装行商をやるとか、身の振り方を考えねばならないだろう。 とにかく大事なのは、戦いの前線に立ち続ける事。 将来はそういう立場を得たいものだ。「次はイングリス様ですな。さぁ、どうぞ――」「はい、分かりました」 自分の番だ。イングリスは頷いて『洗礼の箱』の前に進み出る。