宇髄が自分の胸に善逸を押しつけ、腕で耳を囲うように抱き寄せる。外の音が遮断された宇髄の腕の中で善逸の耳が拾った音は3つ。ひとつは自分の鼓動、ひとつは宇髄の鼓動。そしてもうひとつ。「……ここに、いる、の?」誰ともなく問うた声。小さな、本当に小さな鼓動が善逸の耳を力強く震わせたのだ。「聞こえたか?」「う、ん」「どうだった、ド派手な音してたか?」「…っ、うん…!」「そっか、そりゃあ俺とお前の子だもんな」腹にあてた善逸の左手に、揃いのプラチナの結婚指輪をはめた宇髄の手のひらが添えられる。その温もりが、善逸にこれが現実だと教えてくれていた。もう片方の手で宇髄の大きな背中にしがみついて、善逸はボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。