騒さわぎになっても面めん倒どうなので、あえてベルトラム王国の王女姉妹だとは言わない。「どうぞ、お通りください。案内いたします」 門番達は目配せをしてから、内一人が案内を行う。「お手数をおかけします」 リオは礼れい儀ぎ正ただしく会え釈しやくしてから、歩きだした案内役の門番の背中を追う。クリスティーナとフローラもその後を続いた。その場に残る門番二人はさりげなくクリスティーナとフローラの顔を盗ぬすみ見みしていて――、「………………なあ、見たか?」「あ、ああ。見た。あんなに可愛い子達初めて見た」「髪かみの色が同じだったし、顔だちが似ていたし、姉妹かな?」「かもな」 田舎いなかの城塞都市ではこれといった真新しい話題もなく、門番は暇ひまな仕事なのだ。部外者で砦を訪れる客など一日に一人も来ないことすらざらにある。ゆえに、門番二人はリオ達が立ち去ると、興奮してクリスティーナとフローラの可愛さを話題にした。 しかし、リオ達の姿が完全に見えなくなったタイミングで、そんな門番二人のもとへと新たに近づいてくる人物が現れる。レイスだ。「おい。また誰だれか来たぞ」「本当だ。また旅人っぽい格好をしているけど、なんか不気味だな」 ひそひそと言葉を交かわす二人。そうこうしている間に、レイスは二人の前まで近づいてきて――、「どうも。私、ジャン=ベルナールと申しまして。王城にてシルヴィ王女の補ほ佐さ官かんをしている宮廷貴族です」 レイスはリオ達を追って砦に入るべく、ルビア王国内での立場を明かしたのだった。◇ ◇ ◇ リオ達は砦の応接室へと案内されていた。 三人でソファに腰こしを下ろし、待機していると――、「どうもどうも、お待たせしました。ガルアーク王国の名誉騎士様だとかで。こちらの都市の代官を務めているマルコ=トンテリと申します。貴方あなた様さまのお名前は、確か……」 応接室の扉とびらが開き、実に恰かつ幅ぷくの良い中年の男性貴族が姿を現す。額に汗あせを浮うかべ、腰を低くしてまずは名誉騎士であろうリオに握あく手しゆを求めてきた。続けて、クリスティーナとフローラの様子を確認すると、わずかに目を光らせる。