俺は個人における世界一位の方で忙しかったためチーム戦に関しては素人なのだが、それなりに知識はある。いずれは俺も最強のチームを組んで、チーム戦でも世界一位になろうと画策していたからだ。まあ、その夢は叶わず終わったが。 そんな俺のニワカ知識から見ても、この第一宮廷魔術師の訓練方法は「おかしい」と一目で分かった。 そもそもの前提がおかしいのだ。 殲滅・遊撃・援護・補助の全てをこなすから戦況に応じて形を変える――聞こえは良いが、それは、魔術師の仕事ではない。 魔術師とは「広範囲に高火力で攻撃を行う中距離兵」である。ハマった時の威力はでかいが、剣術師などの近距離兵の突撃には全くと言っていいほど対応できず、弓術師などの遠距離兵からの狙撃でも容易に崩れてしまう。つまり「火力的には一人か二人で十分」であり「壁役などの近距離兵による護衛が必須」なのだ。 魔術師ばかりで殲滅隊を組ませて集団行動させても、敵の近距離兵の突撃で一瞬にして総崩れ。かといって遊撃させれば、壁役がいないので弓兵からの集中砲火を喰らって終わり。援護といっても、メイン火力となる肆ノ型や伍ノ型は広範囲のため、緻密な連携が取れていないと味方を巻き込んでしまう。補助的運用は確かに便利だが、それは魔術師としては勿体ない使い方と言える。 それが分かっていないのか、はたまた分かっていてどうにもできない理由があるのか。何故にこれほど陣形ばかり訓練するのか疑問でしかない。 そこで、俺はふと思い出した。チェリちゃんの言葉だ。「こんな人が肆ノ型を使えるわけがありません」と、彼女は確かにそう言っていた。 …………まさか。「なあ、正直に挙手してくれ。この中で肆ノ型を使える者は? どの属性でも構わない」 ぽつ、ぽつ、と。200人中20人程度が手を挙げる。うっわぁ……。「……伍ノ型は?」 今度はゼファー団長しか挙手しない。マジかよ!? チーム戦において魔術師を魔術師として効果的に用いるには、肆ノ型・伍ノ型が必須である。それも、四大属性の壱ノ型~伍ノ型全てを高段まで上げ切った“INT魔人”が理想とされている。魔術師の強味は「広範囲への高火力攻撃」――それができない魔術師などお荷物でしかない。 ……現状。この第一宮廷魔術師団は、チーム戦では使い物にならない新兵の寄せ集めと断言できる。 きっと敵国の魔術師も同レベルの集団で、つい二十二年前まで子供の喧嘩みたいな戦争をしてきたのだろうが、俺が講師をやる以上は泥仕合なんて認められない。 かといって、じゃあ、何か。こいつら一人一人に肆ノ型を教えて回るってか? 馬鹿言え、そこまで面倒は見きれない。 何とかして、こいつらをこのまま運用できる方法を模索するしかない。 そう、何とか、何とかして……。 …………。「何とかなるかァ! 俺もう帰る!」「こ、小僧! 何処へ行く!」「また明日来る!」