フローラは再び髪を泡立てるのを再開する。髪が長いため、洗い残しがないように入念に泡立てる。他方――、「えっと、確かこっちが洗顔用の石鹸だったわね」 こういったところでも手て際ぎわの良さが発揮されるのか、クリスティーナはコンディショナーを髪につけ終えて馴染ませている間に洗顔を開始することにした。石鹸をしっかりと泡立ててから、顔に塗ぬり込んでいく。(はあ、気持ちいい……) カサカサになっていた肌はだが急速に潤いを取とり戻しているのがわかる。クリスティーナは目を瞑つぶりながら、多幸感に包まれていた。力を込めすぎず、しかししっかりと顔の汚よごれを落とし、最後にお湯で泡を洗い流す。「わっ、お姉様、もうお顔を洗われたのですか」 フローラはすぐ傍そばでそれを見て、慌ててシャンプーの泡を洗い流そうと桶にお湯を溜め始めた。「ちゃんと泡は洗い流すのよ。お湯を被かぶれば身体も温まるでしょうから、焦あせりすぎなくてもいいから」 クリスティーナはふふっと笑いながら言うと、最後に身体を洗うことにした。ハンドタオルにボディソープを馴染ませて泡立て、利きき腕うでとは反対の手から洗い始める。(本当、良い香かおりね。石鹸類はリッカ商会が開発したものが一番だと思っていたけど、泡立ちも香りもここの石鹸の方がだいぶ良い気が……) お風呂から上がった後の髪と肌の状態を確かめないことにはなんとも言えないが、クリスティーナはそう思った。(それとも、この石鹸もリッカ商会製のものなのかしら? この家といい、この家を収納していたという空間魔ま術じゆつの魔道具といい、アマカワ卿きようの所有物は謎なぞが多すぎるわね) クリスティーナは首を捻りながら、岩で覆おおわれた浴室を見回す。王族のクリスティーナですら目にしたことがないような逸いつ品ぴんを立て続けに見せられて、好奇心を完かん璧ぺきに押し殺ころせというのも酷こくな話だ。